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はじめに
場面緘黙症は、特定の場面や状況で話すことができない障害です。この症状は、児童期から発症することが多く、学校生活や社会生活に大きな影響を与えます。本当は話したい気持ちがあるのに、不安やストレスから言葉が出てこない状態になってしまうのです。
場面緘黙症は、比較的珍しい障害ですが、適切な支援と治療を受けることで、症状の改善が期待できます。本ブログでは、場面緘黙症の症状、原因、診断基準、治療法、そして支援の在り方について詳しく説明していきます。周囲の理解と配慮が重要な障害でもあるため、みなさんに正しい知識を持ってもらえればと思います。
症状
場面緘黙症の主な症状は、特定の場面で話すことができないことです。しかし、その症状には個人差があり、さまざまな形で現れます。
安心できる場所では話せる
場面緘黙症の子どもは、家庭内や親しい人と一緒のときは普通に会話ができます。しかし、学校や公共の場所などでは、まったく話せなくなってしまいます。この「話せる場所」と「話せない場所」の違いが、場面緘黙症の大きな特徴です。
子どもによっては、友人と一緒のときは話せるが、先生がいるとまったく話せなくなるという場合もあります。不安を感じる状況が、個人によって異なるのです。
言語能力に問題はない
場面緘黙症の子どもは、言語理解力や語彙力に問題はありません。単に、特定の場面で不安になり過ぎて、言葉が出てこなくなるだけなのです。本来の言語能力は健常であり、安心できる環境であれば十分にコミュニケーションがとれます。
しかし、長期間話せない状態が続くと、二次的な言語発達の遅れなどが生じる可能性があります。そのため、早期発見と適切な支援が重要視されています。
不安やパニック症状を伴う
場面緘黙症の子どもは、話せない状況になると、強い不安やパニック症状に見舞われます。顔をこわばらせたり、体が固まったりするなどの身体症状が出ることもあります。
一部の子どもでは、笑ったり動いたりすることもできなくなり、完全に固まってしまうケースもあります。このような症状は、子ども自身にとっても大きなストレスとなります。
原因
場面緘黙症の原因については、まだ完全に解明されていませんが、いくつかの要因が関係していると考えられています。
遺伝的な要因
場面緘黙症の発症には、遺伝的な要因が関与していると指摘されています。特に、不安症や社交不安障害、自閉スペクトラム症などの発達障害の家族歴がある場合に、場面緘黙症のリスクが高くなる傾向にあります。
また、扁桃体の機能異常が関係しているのではないかと考えられています。扁桃体は、恐怖や不安などの情動反応に関係する脳の領域です。
環境的な要因
遺伝的な要因だけでなく、子どもを取り巻く環境も、場面緘黙症の発症に影響を与えます。特に、両親の育て方や家庭環境が大きく関係しているようです。
また、幼稚園や学校での人間関係のトラブルや、いじめなどのストレス体験も、場面緘黙症を引き起こす可能性があります。
言語発達の遅れやコミュニケーション障害
場面緘黙症の一部の子どもでは、言語発達の遅れやコミュニケーション障害が認められることがあります。このような言語能力の問題が、場面緘黙症の発症に関与している可能性が指摘されています。
しかし、場面緘黙症の子どもの中には、言語能力に全く問題がない子どももいます。言語発達の遅れは、原因というよりは併存する症状である可能性が高いと考えられています。
診断基準
場面緘黙症の診断基準は、DSM-5(米国精神医学会の診断マニュアル)とICD-11(世界保健機関の国際疾病分類)で定められています。
DSM-5の診断基準
DSM-5では、以下の4つの基準をすべて満たす必要があります。
- 特定の社会的状況で一貫して話すことができない
- その障害が学業や対人関係に支障をきたしている
- 症状が1か月以上持続している
- 症状が、知的障害や意欲の欠如、言語能力の不足、自閉スペクトラム症や統合失調症などの経過中に起こるものではない
ICD-11の診断基準
ICD-11では、以下の3つの基準を満たす必要があります。
- 特定の社会的状況(たいていは家庭以外)では、期待される言語能力を示すことができない
- その障害が学業や対人関係に支障をきたしている
- 症状が言語発達の遅れや知的障害によるものではない
さらに、自閉スペクトラム症の診断基準も満たさない必要があります。
治療法
場面緘黙症の治療には、さまざまなアプローチがあります。症状の程度や本人の年齢、併存する障害の有無などによって、適切な治療法が選択されます。
認知行動療法
認知行動療法は、場面緘黙症の標準的な治療法の一つです。この療法では、不安感や恐怖心を和らげることを目的としています。緩やかな露出療法や、リラクゼーション法、自己肯定感を高める認知再構成などの技法が用いられます。
認知行動療法は、心理的な側面からアプローチする治療法です。症状の改善に加え、本人の自信を高め、社会不安障害などの併存する障害の予防にもつながります。
薬物療法
薬物療法は、認知行動療法と併せて行われることが多くあります。抗不安薬や抗うつ薬が処方され、不安症状や抑うつ状態の改善を目指します。
しかし、薬物療法単独では症状の根本的な改善は難しいため、認知行動療法などの心理療法と組み合わせて行うことが推奨されています。
行動療法的アプローチ
行動療法的アプローチは、ゆっくりと話せる範囲を広げていく「段階的エクスポージャー」が中心となります。最初は家庭内から始め、学校や社会への段階を踏んで広げていきます。
また、ロールプレイなどを通して、実際に話す練習をすることも大切です。ただし、無理強いは避け、本人のペースを尊重することが重要です。
言語聴覚療法
言語聴覚士による療法は、場面緘黙症に併存する可能性のある言語発達の遅れや構音障害などを改善することを目的としています。
言語訓練や発音練習、コミュニケーション能力の向上を図ります。場面緘黙症の根本的な治療ではありませんが、併存する言語障害の改善を通じて、全体的な症状の改善につながる可能性があります。
周囲の支援
場面緘黙症の治療においては、専門家によるアプローチだけでなく、家族や学校などの周囲の理解と支援が非常に重要です。
家族の理解と支援
家族は、場面緘黙症の子どもにとって最も身近な存在です。子どもの気持ちを理解し、強要せずに受け入れることが何よりも大切です。また、治療への協力や、専門家との連携も欠かせません。
一方で、家族自身も大きなストレスを抱えがちです。家族会などのサポートグループに参加することで、気持ちの整理や情報交換ができ、孤立感の解消にもつながります。
学校の配慮と支援
場面緘黙症の子どもにとって、学校は最も大きな困難に直面する場所です。そのため、教師や学校関係者の理解と適切な配慮が不可欠です。
具体的には、無理強いをせずに待つ姿勢を持つこと、必要以上に注目を浴びせないこと、代替的なコミュニケーション手段を用意することなどが挙げられます。また、特別支援教育の対象となるため、専門家によるサポートを受けられるよう調整することも大切です。
社会的理解の促進
場面緘黙症は、まだ社会的な認知度が低い障害です。周囲の人々が正しい理解を持つことで、適切な配慮や支援につながります。
啓発活動や情報発信を通じて、場面緘黙症の実態を知ってもらうことが重要です。障害者差別解消法の理解促進や、支援者の育成なども必要とされています。
まとめ
場面緘黙症は、特定の場面で話せなくなる障害です。発症には遺伝的要因と環境的要因が関係しており、不安やストレスなどの心理的側面が大きく影響しています。
治療には認知行動療法や薬物療法、言語聴覚療法などがありますが、根気強い支援とともに、家族や学校、社会全体の理解が欠かせません。適切な配慮と段階的なアプローチにより、症状の改善が期待できます。
場面緘黙症は、本人だけでなく家族にも大きな苦労を強いる障害です。しかし、周囲の支えと専門家の適切な介入があれば、乗り越えられる障害でもあります。ひとりひとりができることから始め、場面緘黙症の子どもたちが安心して成長できる環境づくりに努めていきましょう。
よくある質問
場面緘黙症の主な症状は何ですか?
症状としては、特定の場面では全く話すことができないことが大きな特徴です。しかし、安心できる家庭内や親しい人とのときは普通に会話ができ、「話せる場所」と「話せない場所」の違いが問題となります。また、不安やパニック症状を伴うこともあります。
場面緘黙症の原因は何ですか?
遺伝的要因と環境的要因の両方が関係していると考えられています。不安症や発達障害の家族歴がある場合のリスクが高く、幼稚園や学校でのストレス体験なども影響します。一部の子どもには言語発達の遅れも認められます。
場面緘黙症の治療法にはどのようなものがありますか?
認知行動療法、薬物療法、行動療法的アプローチ、言語聴覚療法などがあります。症状の程度や併存する障害に応じて、適切な治療法が選択されます。また、家族の理解と支援、学校の配慮なども重要です。
場面緘黙症への社会的理解が重要な理由は何ですか?
場面緘黙症は認知度が低い障害のため、周囲の人々の正しい理解が欠かせません。適切な配慮や支援につながるほか、本人や家族のストレス軽減にもつながります。啓発活動や支援者の育成が必要とされています。