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はじめに
学習障害は、脳の機能的な違いによって特定の学習能力に困難があらわれる障害のひとつです。読み、書き、計算などの基本的な能力が十分に身につかないため、子供のころから様々な困難に直面することがあります。しかし、大人になってから初めて気づかれるケースも少なくありません。今回は、大人の学習障害について、その特徴や影響、そして支援の方法などを詳しく解説していきます。
学習障害の種類と症状
学習障害には大きく分けて3つの種類があり、それぞれ異なる症状が見られます。
読字障害(ディスレクシア)
読字障害は、文字や単語の認識や読解に困難がある障害です。文字が逆さまに見えたり、文字の順序が入れ替わって見えたりすることがあり、文章の意味を正しく理解するのが難しい場合があります。
子供のころは読み書きの習得が遅れがちで、大人になると長文を読むのに時間がかかったり、資料や指示書の内容を正しく把握するのが困難だったりします。
書字障害(ディスグラフィア)
書字障害は、文字を正しく書くことが難しい障害です。文字の形が定まらず、文字を書く順序や向きを間違えることがあります。
子供のころは綴りや文字の書き順を覚えるのが苦手で、大人になってもメモを取ったり、レポートや報告書を書くのが困難になります。手書きと比べて、パソコンやタブレットに入力する場合の方が書きやすいことがあります。
算数障害(ディスカルキュリア)
算数障害は、数の概念や計算、推論に困難があるタイプの障害です。数の大小関係や数値の順番がわかりにくかったり、計算の手順を覚えるのが難しかったりします。
子供のころは足し算や引き算の計算が遅く、大人になると経費の計算やお釣りの計算など、日常生活でも数値処理に支障をきたすことがあります。レジスターやお金の管理を任される仕事は避けた方が無難かもしれません。
大人の学習障害の特徴
子供のころから学習障害があったとしても、大人になるまで気づかれないことが多くあります。大人になって社会人となり、様々な場面で困難が顕在化してくるのです。
仕事での困難
大人の学習障害のある方は、仕事でさまざまな困難に直面することがあります。上司の指示やメールの内容を正しく理解できないため、同じミスを繰り返してしまったり、資料や長文メールを読むのに時間がかかってしまったりします。書類の作成や、打ち合わせの議事録の取りまとめなども困難を伴います。
また、算数障害のある方は、請求書や見積書の作成、金銭の出納管理など、数値を扱う業務で障壁に直面することがあります。
コミュニケーションの困難
学習障害のある方は、言葉の理解や表現に困難を抱えていることがあります。電話の内容を聞きながらメモを取ることが難しかったり、自分の考えをうまく言葉にできなかったりします。会議やプレゼンテーションなど、集団の場でコミュニケーションを取ることに抵抗を感じることもあります。
二次障害の発症
学習障害に気づかれないまま大人になると、うつ病やパニック障害、不安障害などの二次障害を発症してしまうこともあります。周囲から理解されず、自己評価が低くなってしまうことが原因のひとつです。
また、学習障害と合併してADHD(注意欠如・多動性障害)があるケースもあり、大人になってから初めてADHDの症状に気づくこともあります。
大人の学習障害への支援
学習障害のある方が社会で活躍するためには、適切な支援を受けることが重要です。自身の特性を把握し、長所と短所を理解することから始めましょう。
職場での工夫と調整
学習障害のある社員に対しては、合理的配慮として以下のような対応が求められます。
- 文字による指示ではなく、絵や図を使ったマニュアルの作成
- パソコンやタブレットの使用許可(手書きより入力しやすい場合があるため)
- 上司による指示内容の再確認
- 重要事項の強調表示やポイントの明確化
さらに、業務内容や役割分担の調整、資格取得の支援なども効果的な方法です。周囲の理解と協力が欠かせません。
ICT技術の活用
ICT(情報通信技術)の活用は、学習障害のある方の就労を大きく後押しします。
- 音声入力・音声読み上げソフトの利用
- 文字の拡大表示機能の活用
- デジタルツールの導入(タブレットやスマートフォンなど)
このように、テクノロジーを利用することで読み書きの負担を軽減し、能力を最大限に発揮することができます。
発達障害者支援機関の活用
学習障害のある方の就労支援を行っている機関としては、以下のようなものがあります。
- 発達障害者支援センター
- 就労移行支援事業所
- 地域障害者職業センター
- 障害者就業・生活支援センター
これらの機関では、就職活動の支援や、職場での実習、職場定着のためのフォローアップなどを行っています。早めに相談し、適切な支援を受けることをおすすめします。
まとめ
学習障害は子供のころからある発達の特性ですが、大人になってからその困難が顕在化することがよくあります。仕事やコミュニケーションの場面で支障をきたし、二次障害を発症する恐れもあるため、適切な支援を受けることが重要です。企業における合理的配慮や、ICTの活用、専門機関の利用など、様々な選択肢があります。学習障害があっても、得意分野を最大限に生かし、自身に合った環境を整えることで、社会で活躍することは十分に可能なのです。
よくある質問
大人になってから学習障害に気づくのはなぜですか？
大人になると仕事や社会生活で様々な困難が顕在化するため、それまで気づかれていなかった学習障害が初めて認識される場合があります。子供のころは比較的簡単な学習課題でも、大人になるにつれ読み書きや計算など基本的な能力の不足が目立つようになるからです。
大人の学習障害にはどのような特徴がありますか？
大人の学習障害の特徴としては、仕事での困難(指示理解やレポートの作成など)、コミュニケーションの問題(メモ取りや意思表示の困難)、二次障害の発症(うつ病やパニック障害など)が挙げられます。また、ADHD等の合併症状を持つ場合もあります。
大人の学習障害にはどのような支援がありますか？
企業における合理的配慮(図解の活用、PCの使用許可など)、ICTツールの活用(音声入力、文字拡大機能など)、発達障害者支援機関の活用(就労支援、職場定着支援など)など、様々な支援策があります。適切な支援を受けることで、学習障害があっても社会で活躍することは可能です。
大人の学習障害はどのように克服できますか？
自身の特性を理解し、長所と短所を把握することが大切です。そのうえで、 ICTの活用や企業、支援機関との協力を得ながら、自分に合った環境を整えていくことで、学習障害を克服し、社会で活躍することができます。
