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はじめに
ADHDとは、注意欠陥・多動性障害のことを指します。不注意、多動性、衝動性といった特徴的な症状を持つ発達障害の一種です。本日は、ADHDについて詳しく解説していきます。
ADHDの症状
ADHDの主な症状は3つあります。まず不注意について見ていきましょう。
不注意
ADHDの人は、話を最後まで集中して聞くことが難しかったり、細かい作業を正確に行うことが苦手だったりします。また、物をよく無くしたり忘れ物をよくしたりするのが特徴です。
例えば、学校の授業中に教師の話を最後まで集中して聞けなかったり、宿題の課題を正しく書き写せなかったり、教科書や筆記用具をよく無くしてしまったりするのです。
多動性
ADHDの人は、じっとしていられず、いつも動き回っていることが多いのが特徴です。落ち着きがなく、ふざけ回ったり、席を離れたりするのが目立ちます。
例えば、教室で席を離れて歩き回ったり、手足をバタバタさせていることが多かったり、話をしているときに体を動かし続けたりするのです。
衝動性
ADHDの人は、考えずに衝動的に行動してしまうことが多いのが特徴です。我慢できず、順番を待てないこともよくあります。
例えば、授業中に質問の順番を待てずに勝手に発言してしまったり、友達とけんかになって暴力を振るってしまったり、金銭管理ができずにお金を無駄使いしてしまったりするのです。
ADHDの原因
ADHDの正確な原因はまだ分かっていませんが、いくつかの要因が指摘されています。
脳の発達の偏り
ADHDの人の脳では、前頭前野や線条体といった部位の発達に偏りがあり、そのため注意やコントロールの機能が低下していると考えられています。
前頭前野は、精神活動を統合したり行動をコントロールしたりする役割を担っており、線条体は運動機能や報酬系に関与しています。これらの部位の発達の偏りが、ADHDの症状の原因になっていると言われています。
遺伝的要因
ADHDには遺伝的な要因が関係していることがわかっています。双子研究から、ADHDの遺伝率は約76%と推定されています。
しかし、ADHDの原因となる特定の遺伝子は発見されていません。複数の遺伝子が関与し、環境要因も加わって発症するものと考えられています。
神経伝達物質の異常
ADHDでは、ドーパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の活動に異常があると考えられています。これらの物質は注意や刺激に対する反応性に関与しており、その異常がADHDの症状の原因になっていると言われています。
実際、ADHDの治療薬であるメチルフェニデートなどは、このような神経伝達物質の働きを改善する効果があります。
ADHD診断と治療
ADHDの診断と治療には、いくつかの方法があります。
診断
ADHDの診断には、主に以下の3つの基準が用いられます。
- 不注意、多動性・衝動性の症状が一定以上認められること
- 症状が12歳以前から持続していること
- 症状により、2つ以上の場面で支障があること
また、他の発達障害やうつ病などの除外診断も重要です。面接や行動観察、知能検査、rating scaleなどの検査を組み合わせて総合的に判断されます。
薬物療法
ADHDの治療によく用いられるのが、薬物療法です。主な薬剤には以下のようなものがあります。
| 薬剤名 | 作用機序 |
|---|---|
| メチルフェニデート | ドーパミン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用 |
| アトモキセチン | ノルアドレナリン再取り込み阻害作用 |
| グアンファシン | ノルアドレナリンα2A受容体作動作用 |
これらの薬剤は、脳内の神経伝達物質の働きを調整することで、ADHDの症状を改善させる効果があります。
心理社会的治療
薬物療療に加えて、心理社会的なアプローチも重要です。具体的には以下のようなものがあります。
- 行動療法
- 認知行動療法
- 親訓練
- ソーシャルスキルトレーニング
これらの療法を通じて、ADHDの人に適切な行動のとり方を身につけさせたり、周囲の人とのコミュニケーション方法を学ばせたりします。
ADHDの理解と支援
ADHDについて正しく理解し、適切な支援を行うことが重要です。
ADHDに対する偏見の払しょく
ADHDの人は、集中できないからだらしないと思われがちです。しかし、ADHDは脳の機能障害に起因する発達障害であり、本人の努力不足が原因ではありません。
また、ADHDは「育て方が悪かった」のではなく、生まれつきの障害です。子育ての問題ではないことを理解する必要があります。
ADHDの長所の活用
ADHDには、短所だけでなく長所もあります。ADHDの人は、パッと見た発想力や創造力に富んでいることが多いのです。
こうした長所を生かせる環境を整えることで、ADHDの人が活躍できる場が広がります。アイデアを出しやすい雰囲気作りなどが有効でしょう。
周囲のサポート
ADHDの人が日常生活を送る上で、家族や友人、職場の理解と協力が欠かせません。具体的な支援の方法を一緒に考え、実行に移すことが大切です。
例えば、スケジュール管理の仕方を一緒に立てたり、ADHDの特性に合わせた作業環境を整えたりするなどです。周囲の細かいサポートが、ADHDの人の力を引き出すことにつながります。
まとめ
ADHDは、注意欠陥、多動性、衝動性を主な症状とする発達障害です。症状は個人差が大きく、しつけや努力不足が原因ではありません。脳の発達の偏りや遺伝、神経伝達物質の異常が原因と考えられています。
診断には複数の基準があり、薬物療法と心理社会的アプローチを組み合わせた治療が行われます。ADHDへの正しい理解が重要で、長所を活かせる環境づくりと、周囲のサポートが欠かせません。ADHDの人も、適切な支援があれば、十分に活躍できるはずです。
よくある質問
ADHDとは何ですか?
ADHDは、不注意、多動性、衝動性といった特徴的な症状を持つ発達障害の一種です。脳の発達の偏りや遺伝的要因、神経伝達物質の異常が原因と考えられています。
ADHDの症状には何がありますか?
ADHDの主な症状は3つあります。不注意では、集中力の低さや物忘れが目立ちます。多動性では、じっとしていられずに体を動かし続けることが特徴です。衝動性では、考えずに行動してしまうことが特徴的です。
ADHDの診断と治療にはどのような方法がありますか?
ADHDの診断には、不注意や多動性・衝動性の症状、発症時期、場面による支障の有無などの基準が用いられます。治療では、薬物療法と心理社会的アプローチを組み合わせて行われます。
ADHDの人に対してどのような支援が大切ですか?
ADHDの人の長所を活かせる環境づくりや、家族、友人、職場などからの細かいサポートが重要です。偏見をなくし、ADHDの特性を理解し、適切な支援を行うことが大切です。
